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本日公開の最新朗読作品『幼少期にだけ「何かが見えていた」大人たちの回想録』のご案内です。

【作品紹介】

通学路のすきまに潜む紺色の影法師。
食卓にそっと現れる、見知らぬ少女。
雨の直前にしか現れない、名前のない空の色。
そして、音を立てて沈む四角い太陽。

大人の世界には、名前のついたものしか存在しません。 でも、子どもの頃の世界はもっと曖昧で、不思議な優しさに満ちていました。

大人という名の眼鏡をかけて失ってしまった、切なくも温かい「あの頃の記憶」。 ――あなたは今日、どの物語の扉を開けますか?

本編は、ぜひ動画でお楽しみください。

個人的なおすすめの話は「名前のない色の空」です。


【各話あらすじ】

第1話:妹よ

祖父の家には、いつも一人分だけ余計に食事が用意されていた。窓際の誰も座らない席。でも、私には見えていた。長い黒髪で白い服を着た、自分と同じくらいの歳の女の子が、黙ってご飯を食べている姿が。大人たちに聞いても誰も答えてくれない。ある夜、思い切ってその子に話しかけると、彼女は無言で自分の胸元の小さな赤い跡を指差した。怖くなって祖父のもとへ逃げ込んだ翌朝、女の子は消えていた。数年後、祖父が亡くなり、遺品を整理していた私は一枚の古い写真を見つけ、衝撃の事実を知る。

第2話:名前のない色の空

世界には、言葉や名前を与えられていない「色」が存在する。八歳までの私にとって、雨が降り出す直前の空は、青でも紫でも灰でもない、光のひび割れのような特別な色彩に染まっていた。どうして大人にはこの美しい色が見えないのだろう。そう不思議に思っていた。けれど、理科の授業で光の仕組みを学び、色彩辞典に載っていないその色の損失に気づいたのは、十三歳の梅雨のことだった。あんなに鮮やかだった街は、ただの「薄暗い曇り空」に変わり、世界は名前のある色だけで満たされてしまった。

第3話:紺色の影法師

大人の世界は名前のあるものだけでできている。けれど子どもの頃、世界はもっと曖昧で、街のいたるところに名前のつかない何かが潜んでいた。小学二年生の秋、夕方のサイレンが鳴り響く中、通学路の古い木造家屋のすきまに、僕は「それ」を見た。深い海のような紺色の服を着た、とても背の高い人。大人には見えず、僕にだけ見えていたその存在と、言葉のない交流が始まる。雨の日も風の日も、その人はいつもそこに立っていた。けれど、ある日突然、その姿は消えてしまい……。

第4話:白い傘

子どもの頃、雨の日になると祖母の家の裏山に、大きな白い傘を持った人が現れた。顔は見えないが、古い杉の木の下にじっと立っている。「山には行ったらだめだよ」。祖母はそう言って私を止めたが、その手は妙に強かった。ある雨の日、好奇心に駆られた私は坂を上り始める。あと少しでその人に届くという時、後ろから祖母の悲鳴のような声が響いた。大人になり、久しぶりに帰省した雨の日、私は再び裏山に白い傘を見る。祖母が静かに語り始めた、かつて村で行方不明になった女性の物語とは。

第5話:四角い太陽の沈む場所

大人の世界において太陽は完全な円形だ。けれど僕が六歳だった頃、空に浮かぶその光の塊は、角の立ったオレンジ色のサイコロのような「四角い箱」の形をしていた。その太陽は、一段また一段と見えない階段を下りるように沈んでいき、地平線へと隠れる瞬間、耳の奥で『カチリ』という重く静かな音が響く。それは、世界という巨大なからくり箱のパーツが正しい位置にはまり込むような音だった。母に「太陽は丸い」と言われても納得できなかった僕は、大人になるにつれ、その四角い角と『カチリ』という音を失っていく。

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